特定非営利活動法人 福音の園・埼玉

Мさん「ひと言葉」に、「悪者扱い」してはいけない「認知症」をみた

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理事長ブログ

Мさん「ひと言葉」に、「悪者扱い」してはいけない「認知症」をみた

2022/02/22

 社会学者の上野千鶴子さんがNHKテレビ『最後の講義』で、「下り坂を支え合って生きていかなきゃいけない社会に私たちは生きている訳ですね」と講義を結ばれ、「超高齢社会を生きる道」を例証して下さった(2022.1.16 NHKBS放映)。

 

「3.安心して認知症になれる社会を!」の行で、

私は“認知症予防”という言葉が好きではありません。「予防」出来なかったから認知症になってしまうのか? 誰だって、好きでコロナに罹ってしまう訳ではない、と警鐘された。思わず、脳裏を次の言葉がよぎった。

『最近の風潮で気になることがある。「予防」を強調し過ぎることです。誤解されやすいのは、認知症の予防とは「ならない」という意味ではなく、「認知症になるのを遅らせる」、「認知症になっても進行を緩やかにする」という意味。「運動もしている。食事も気をつけている。脳トレーニングもやっている。なるはずがない!」と言い張って、家族を困らせたりする。』

(日本認知症ケア学会 理事長 繁田雅弘氏)

 

 Мさん[91歳・女性・要介護3]は、小規模多機能型居宅介護で「通い」と「お泊り」サービスをご利用された後、ご入居された経緯の方。テーブル向かいには(共用型)デイサービスご利用中のNさんが着席しておられる。МさんとNさん、仲睦まじく遠くから眺めても微笑ましい限りのお二人。出発の時間になったので、お二人の会話に割って入り、Nさんへ「お帰りの時間になりました」と告げた。すると、Мさんが帰り支度のNさんに、

「私もここでお世話になっているの。もう少ししたら、息子も定年退職して家に帰って来て住んでくれるから、それまでの間、こちらでお世話になっているの!」と胸の内を話しておられた。

「通いとお泊り」サービスを終了して「ご入居」されたことを忘れてしまわれた様子だったが、Мさん「ひと言葉」にハッとさせられた

「認知症だから! と一笑してはいけない」。Мさんは息子さんが帰って来て同居してくれることを本気で楽しみ(生き甲斐)にしておられる。認知症状が、Мさんには一日一日を生きる張り合いにしてくれている? だから、認知症を「悪者扱い」してはいけない!

「息子が帰って来て同居してくれる」と固く信じている―だからそれまでの間(会える日まで)ここで生活するんだ―と。なんと微笑ましい「頼る親の愛、頼られる子の羨ましさ」。

 

 十人十色の認知症状。「徘徊」「問題行動」と呼ばれる認知症状事例が見聞される中、Мさんの認知症は決して「悪者」(疫病神)ではない。むしろ「宝石」のようにキラリと光り輝くものだ、と受け取り直さなければいけなかった。管理者として、「認知症理解」を深く、広く、そして明るくさせてくれた、Мさん「ひと言葉」だった。

(2022.2.22)

 

NPO福音の園・埼玉 理事長 / グループホーム福音の園・川越第二 管理者 杉澤 卓巳

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